これみよがし日記

感情の整理箱

音楽とお酒があればそれでよかったのに

昨日は、お酒と音楽と人々で成り立つとあるイベントに参加した。美味しい料理を囲んでお酒を片手に音楽を聴くというなんとも贅沢な時間を過ごした。みんなの中心にある料理が知らない人との繋がりの潤滑油となり、お酒が動き慣れない口を動かす。

カレーを食べながら、ギターやベースをかき鳴らしている姿をみて、正しい在り方を見ている気がした。月収○○円稼ぐ仕事術とか知らないと損!明日からできる講座とか、自己啓発本のタイトルみたいな言葉と隣り合わせの生活を送っている身として、はっとした。煽られるからやるのではなく、お金のためだからではなく、純粋に音を楽しみたいという純白な気持ちが動かしていた。普段は電車に乗って、会社に行って、週末の楽しみとして音楽を楽しむ。そんな人たちが多くを占めていた。

なんで音楽をやっているのですか?と聞くと、趣味で音楽をやっていると口を揃えて言っていた。私は笑顔で、それはとても素敵な趣味ですね、と言った。目は笑っていなかった。そんなに好きなら趣味じゃなくて本気でやったらいいじゃんって心のどこかで叫んでた。だから私は言ってやった。お前もそうじゃないの?って。

イベントは後半に差し掛かり、照明を落とた薄暗い中から始まった。みなさんの思い出の曲、忘れらない曲を聞いてその人のルーツを探ろうという回だった。一人の女の子が、最近までこの曲に激励されたと言って紹介してくれた。歌詞を眺めながら、メロディーを聞く。それに対して、感じたことを話す。音楽についてでも良いし、その人を絡めてもいい。ここの歌詞は本当はこの女の人のことを好きだったんじゃないかといった具合だ。しっかりしている○○を知っているから、強くなりたいという理想を持っていることがわかるとか、そんなこと思ってたんだねとかその人について語る優しい時間だった。私は後悔していた。少し前に戻って、本気でやれよって思っていた自分をぶん殴りたいって思った。ここにいるみんなは、誰かに言われる前からずっと音楽と向き合い続けていたんだ。本業があるから、適当に音楽をやっているのではないかという考えがあまりにも軽率で偏見にまみれていたことに気づいた。私は自分が恥ずかしくなった。自分に余裕がないのも、本気でやっていないのも全部自分だった。自分のことを巧妙な手口で人にすり替えていた。詐欺師だった。

そんなことに気づいてしまったから、笑顔で話しかけてくれる人たちに最強の人見知りをプレゼントした。誰かに笑顔で返す余裕なんてなかった。即返品、クレームがきてもおかしくないけど、みんな顔は笑っていて、ただただ耳を傾けていた。なんなんだろうって思った。

帰り道、駅に向かう道が閑静で、歩いた音が返ってくる。返ってくるから聞いてみた。「私どうすれば良かった?」それ以降、足音は返ってこなかった。